(01からの続きです)
09年11月、美島さんと、あまり意図せずに初めて会ったことは、私には驚きと喜びでしたが、それはそれで、まぁ一回性、一過性のことと思っていました。
私は、美島さんと(業界的に)近い場所で仕事をしていた時期もあるので、まぁ、まったく無縁とまでは言えませんが、ある時期以降、コンテンツ系の仕事より、金融系、投資系の仕事が増え、09年の時点では、それで食えるようになっていたので、自分としては”ただの音楽ファン、コーネリアスファン”だと思っていました(今でもそうですが)。
ここでちょっと、美島さんの話を離れて、私(桝山寛)がコーネリアスのファンになったきっかけを、ちょっと書いておきます。フリッパーズ・ギターは、もちろん知っていましたし、90年代初頭のある時期、岡村靖幸やピチカート・ファイヴなどとともに、よくCDを聴いていたこともあります。コーネリアスとしてデビューしたときも、ファーストアルバム(1994年2月発売)は、すぐに買って”あぁ、今度のパクリネタは、ジャミロクワイなのか”などという印象を持ったことを覚えています。
ただ、それは、他にも多数ある”よく聴くCDのうちのひとつ”に過ぎず、すでに30代で社会人としてかなり多忙だった身として、それ以上の興味を持つ時間もエネルギーもありませんでした。ファーストアルバム以降、コーネリアスのことは忘れていたといっていいかもしれません。
その後、日本国内の音楽シーンに対して、椎名林檎など、ごく一部を除いて、ほとんど興味を失っていた私は、日常のBGMとして、ボサノバやラウンジ系テクノ、軽いジャズ、クラシックなどを聴いていれば、そこそこ満足という、”普通の音楽ファン”でした。ナップスターが流行ったときも、10代の頃に好きだった曲をダウンロードしただけで、あまり新しいものは探しませんでした。
少し大げさに書けば、”もう新しい音楽なんて出てこないし、別に要らないかな”とさえ思っていました。90年代中期に、坂本龍一さんが、”究極のポップスはボサノバ”と言っていた(公式発言ではないかもしれません)のが印象に残っています。
フリッパーズ・ギターを聴いていた頃から考えれば、ほぼ15年後の2006年、ある英字新聞にコーネリアスのインタビュー記事が載っていました。普段から(紙の)英字新聞を読むような習慣は無いのですが、日本語の新聞だと物足りないことも多いので、飛行機に乗ったときなどは、あえて英字新聞を選ぶことがあります。
今にして思えば、それは”Sensuous”発売前後の、プロモーション的な露出であり、普通の音楽雑誌などにも、小山田氏が、沢山取材されていた時期のはずですが、私はその新聞しか目にしませんでした。
インタビューそのものより、私が興味を引かれたのは、そこに”コーネリアスは、海外で、アルバムが30万枚も売れる、日本の輸出品のひとつ”と書かれていたことです(文面はうろ覚え)。
仕事で年に数回はヨーロッパに行く機会がある私は、90年代中期以降、ピチカート・ファイヴやDJ KRUSHなど、日本発の音楽が、ヨーロッパでウケている状況は、知っていたつもりです。しかし、オリジナリティが重視される海外では”ジャミロクワイの上手なパクリ”が、30万枚のヒットになることは、あり得ません。
つまり、私はその時点で”コーネリアスって、海外でもウケてるんだ。へー、不思議”と思ったのです。その時は、そこから先の興味は、持ちませんでした。
その少し後、ある企画の下調べで、日本のDJ・クラブ文化の資料を探していました。その一環として、近所にあるTSUTAYAに行き、参考になりそうなCDを、片っぱしから借りていました。ある日、色々見ている中に、コーネリアスの”Point”があったのです。
2001年に出たCDですから、その時点でもう5年経っているわけで、私の元には、まったく情報が届いていませんでした。私は、前述の英字新聞を見ていなかったら、そこでも借りなかったかもしれません。
軽い気持ちで借り、事務所に戻って、これまた軽い気持ちで聴き始めたところ、CDの、いわゆる”どアタマ”から、完全に私はヤラれました。後でそれは、ソフトウェアのバグで、アプリケーションが暴走し、録音した音がグチャグチャにツギハギになったものを、あえてCDの1曲目に入れたものだ、ということを、美島さん本人から聞くことになったものなのですが…。
音楽評をする場ではないので、控えますが、とにかく、2006年に初めて聴いた”Point”には、10代で色々な音楽を聴いていたとき以来といってもいいほど、気持ちが動かされました。そこには”ジャミロクワイの上手いパクリ”とは、まったく別の、世界でどこにも無い音、しかもポップ、しかも日本語で歌っている…。
いったん好きになると、何でもハマるタイプの私は、ちょうどこの頃”Sensuous”のライブツァーが始まる前段階だったコーネリアスのライブを、機会ある毎に観に行くことにしました。渋谷、アップルストアでのインストアライブ、代官山Unitでのシークレット(Xornelius名義)、同じくUnitで、バッファロードーターが主催のライブ(Sensuous Things名義)…。
いわゆる”普通のライブ”ではないものも、かなりの確率で観に行っていたわけです。Sensuousのツァーが始まってからは、東京はもちろん、名古屋、大阪、高松、まで観に行ったぐらいです(どんだけヒマなんだ!)。高松のような都市だと、ハコが小さくて、とても良い近さで見られるというメリットもあります。
長くなってきたので、ひとまず、この辺で…。
写真は、昨日(6月21日)のレコーディング@目黒B2スタジオ。コンプを調整する美島さん。
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