岡田直子です。
睡眠命の私が、イタリアの国民投票をリアルタイムで追い、2日連続で徹夜してしまいました。最終的に投票率は54,8%(海外在住者票も含む)、国民投票は有効(50%以上で有効となります)。
原発再開反対 94,1%、水事業民営化反対 95,3%、出廷免責反対 94,6%
(出典:La Repubblica紙)
これで、水事業の民営化・原発再開・首相の出廷免責はどれも、圧倒的多数で否決されました。1日目、6月12日(日)の正午の時点では投票率11%あまり。うーん…と思っているうち夕方からどんどん数字が上がりだし、1日目は22時に41%で終了。
Facebook 上で友人達が「投票してきた!」「まだ行ってない人、早く行って!」「このままこの首相に国を食い物にさせておくのか!」「『諦め』や『他人任せ』はもうたくさん。私たちの手に権力を取り戻そう!」と声をかけあって鼓舞しているさまは、鳥肌ものでした。特に、最近の日本の情けなさにやるせない思いをしている身には、彼らが羨ましく、そんな友人達を誇りに思います。
2日目、6月13日(月)15時に投票が締め切られた時点で投票率はゆうに50%を超えていたので、国民投票有効は確実でしたが、開票を待つ間の何十分間がもう、心臓がもたない・・・
しかし開票率が半数に至らないうちから、PC画面の向こうではもうお祭りムードがプンプン。日本のイタリア国民投票報道では、原発の設問ばかりが取り上げられていましたが、イタリア人たちにとっては、これで「ベルルスコーニ時代」が終わる!ということが何よりも大きいようです。
あれだけの数多くのスキャンダルにも負けず、不死身のごとく長年君臨してきたベルルスコーニ氏がこういう形で国民に引きずり降ろされることになるとは、数か月前まではちょっと想像もしていませんでした。
全国紙「La Repubblica」がウェブ中継で流していたTVで、コメンテーターのジャーナリストは、原発問題に福島原発事故は影響したか?という質問に対し、「イタリア人は以前に一度『原発は要らない』と国民投票で表明している。しかし福島の原発事故で、イタリア人のその意識がよりいっそう鮮明になったことは確かだ」とコメントしていました。
もう一つ指摘されていた特徴は、投票率が過半数に達せず無効になって欲しい政府の意向で宣伝が一切されなかった、むしろ間違った日付けが報道されたりなど妨害すらあった今回の国民投票は、facebook や各新聞サイトなど、インターネットメディアが情報伝搬において大きな力を発揮したということです。
主要TVチャンネルをいくつも持ち、報道を自由にコントロールしてきたベルルスコーニ氏の民衆操作のやり方も、ここにきて限界にきた、という分析がされていました。
同僚であり友人でもあるディエゴの言葉を、この2日間、何度も思い出しました。
「デモクラツィア(民主主義)はデモス(民衆)が意識的にクラテイン(政府)を行使できなければ、機能できないのです」イタリアの友人達は今日、それを見事に実行して見せてくれました。
先日のイタリア地方選挙の時も思いましたが(ミラノとナポリで左派が勝利。特に、ミラノは中道右派であるベルルスコーニ首相の地元)、つくづく、イタリア人は古代ローマ人の子孫だなあと思います。
古代ローマでは皇帝がどんなに強権を無理やり振るおうとしても、庶民に人気がなければアウトだったのですよね。そのためローマ皇帝たちは民衆の人気を得ようとして、公衆浴場や競技場など娯楽施設をせっせと建てたりしていたわけです。
彼らはDNAのなかにしっかりと「民主主義」を持っているなあ、と思うのです。
民主主義を市民革命で勝ち取ったわけではなく、「もらった」日本人の「デモス」はどうでしょうか。ここまで権力側から妨害されても、それでもれっきとして「クラテイン」を行使できるでしょうか…(岡田直子)。
*原発再開法の意志を問う投票用紙。脱原発派なら”SI(YES)”を選ぶ。