岡田直子です。
来たる6月12日・13日は、イタリアにとって非常に大事な日になります。 二転三転の末、原発再開の是非を問う、国民投票の実施が確定しました。
イタリアでは既に1987年、国民投票で「脱原発」が決定しており、すべての原発が廃止されています。(チェルノブイリ原発事故は1986年)
しかし原発を推進したいベルルスコーニ首相は、2020年までに原発を稼働させる計画を立てていますが、国民投票をいま実施すると、福島原発事故の影響で「原発再開」が否決される可能性が高いため、国民投票の実施を延期しようとしました。
その際ベルルスコーニ首相は、福島原発事故を受けて「原発の是非を再度検討している」フリすらせず、
「いまは日本の影響で皆が原発に否定的印象を持っているため、この『モラトリアム(猶予期間)』は2年後に皆が再び原発の必要性を冷静に考えられるようにするものだ」
と、「時間稼ぎ」を明確に認める発言すらしました。出典(伊語)
(この発言に対してはfacebook 上でも「時間稼ぎを堂々と認めるとは、たいした厚顔だ」との意見が多数見られました)
しかし、実は内閣に国民投票実施可否の決定権限はないのです。ですから首相のこの発言は、国民投票実施が確定したいま、彼にとって不利に作用する可能性があります。
その後、最高裁が6月1日に「実施」と判定
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(この間にも内閣は国民投票をキャンセルしようと、あの手この手で画策)
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6月7日に憲法裁判所も「実施」と判定
これで国民投票実施が確定しました。
国民投票の設問は、原発の可否を問う以外にも、水事業の民営化や現在法律で定められている「首相の出廷免責」を問うものです。
「出廷免責」がもしなくなれば、多数の裁判を抱えるベルルスコーニの、すでに始まっている「終わりの始まり」は、怒涛のように加速することになります。
ベルルスコーニ首相は、通算100以上の裁判を抱えてきました。首相となってからは自分に有利な法律を次々と成立させ、可能な限り裁判を回避しまた財力を使って無罪や免罪を勝ち取ってきました。(現在進行中の裁判は約5件)
ベルルスコーニがイタリア経済をいかにダメにしたかという考察(英エコノミスト誌)
6月12日・13日は、イタリアのここ数年の流れをあわよくばひっくり返し、イタリアのこれからを決定する大きな分岐点です。ぜひご注目を。
全国紙「ラ・レプブリカ」紙には、ここしばらく日本のニュースはありませんでしたが、今日から「国民投票特集ページ」を設営し(原発問題が大きな扱い)、福島原発事故の3月11日からの出来事を時系列で詳しく追っています(伊語)。
ちなみに、国民投票の日程や投票の仕方などを知らせる政府の広告やCMは、見事なまでに一切ないそうです。
主要メディアで福島関連のニュースが最近とみに少ないのも、原発問題から国民の目を逸らしたい政府の意向が働いていると見る向きも多いです。(イタリアの主要紙はみな、政府から補助金を受けています)
国営放送RAI は、ニュースのなかで国民投票の実施日程を間違って「6月13日・14日」と報道したのが最近2回もありました。
「Rai 1」「Rai 2」とご丁寧にチャンネルの違うニュース(「Tg1」と「TG2」)で2回も、それも日付けを間違えたのはキャスターだけでなく、ニュース内で流れたビデオ内でも間違っていたとなれば、ケアレスミスとは考えにくいですよね。
そこまでやるか!てな感じです。
追記:。ローマ・フィウミチーノ空港に到着した英「エコノミスト」誌が「検査のため」ブロックされているそうです
そのため、同誌がローマのスタンドや書店に並ばず、表紙にベルルスコーニの写真とともに「国全体を騙した男」と大きく書かれ14ページにわたってイタリアの政治・経済状況が詳細に述べられているこの号は現在、販売ができていない状態だそうです。
国民投票は、明後日から。すごいことやりますね・・・(岡田直子)
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