岡田直子です。「正統派ピッツァとは何ぞや」とか「ピッツァにはローマ風とナポリ風がある」など、ウンチクが書いてあるサイトやブログはたくさんあるので、ここでは省き、わたしが生活していたなかで体感した「イタリア人にとってのピッツァとは」を、書いてみます。
これはローマではなく、ナポリのピッツェリアにて。
「ピッツァでも食べに行こうか」と言われる場合、気取らない、フットワーク軽いノリのお誘いです。ピッツェリアはどこにでもあるし、「速い・安い・(そこそこ)旨い」の代表格のようなもの。
シチュエーションとしては、気心知れた友人間のいつもの夕べ、という感じ。週末の晩どこかへ出かける前の手早い腹ごしらえや、イタリアの映画館は遅くまでやっているので(夜の回はだいたい20時頃と22時頃)映画を観に行く前に食べたり、映画や演劇の後に夕食がまだな場合にも便利。
典型的なシチュエーションは、大事なサッカーの試合があるとき。大きなテレビのある家に友人達が集まって、みんなで観戦するのですが、そのときのお伴はピッツァ。家の近くの行きつけのピッツェリアからお持ち帰りしたり、そこへ電話して宅配してもらったりします。
余談ですが、このサイトにも既出のわたしの「元カレ」のお父さんは弁護士で、ハイソな交友関係をお持ちだったのですが、あるサッカー試合の晩、大スクリーンのあるお父さんの家に弁護士や検事仲間が集ったわけです。それ以前にもお父さん宅のディナーで見かけていた上品でインテリなこの人たちが、試合が始まると豹変し、野獣のように叫び、ヤジっていたのを見て、当時イタリアに住んでまだ2年ぐらいでウブだったわたしは、度肝を抜かれた記憶があります。
話を戻して…
これも、ナポリのピッツェリアで。ナストロ・アッズーロ(青いリボン)というブランドは、イタリア最大のビールメーカー、ペローニが生産しているもので、日本のビールに慣れている人には、ちょっと軽めかもしれません(このキャプションのみ桝山寛)
ピッツァを食べるときにワインを飲む人は、あまりいませんね。理由はわかりませんが、圧倒的にビールです。味覚的にも、ワインよりビールの方が合う気がします。ビールの程良い苦さと泡が、口の中の脂分をさっぱり洗い流してくれます。
だいたいどのイタリア人にも、自分のご贔屓のピッツェリアとジェラテリア(アイスクリーム屋さん)があり、誰もが「このピッツェリア(あるいはジェラテリア)がローマいち美味しい!」と言います。好みは主観なので「それは自分にとっての『ローマいち』でしょ」と思うのですが(言いませんけど)、それほどみんな自分のこだわりがある、ということですね。
ローマのピッツェリアにて。友人のJ。GとAのファミリー(桝山寛)。
ピッツェリアに行って座って食べる丸ピザのほかに、イタリア人の定番おやつ「切り売りピッツァ」というのもあります。パン屋さんや切り売りピッツァ屋さんで売っています。四角い大きな鉄板に座布団のように大きなピッツァが何種類も並べてあり、好みの大きさに切ってもらって買います。
元カレのお母さんがよく作ってくれたピッツァも、美味しかったのを覚えています。スーパーでイーストや、時にはピザ生地も売っているのでそれを買ってきて、手のひら大の小さな丸型にまとめてフライパンで焼いたり、油で揚げたり。トマトソース(彼女のトマトソースは缶詰ではなく、市場で買ってきたプチトマトから作る手作りで美味しい)を塗って、アツアツをふぅふぅ言いながら食べるのです。お母さんには残念ながらあまり好かれなかったけれど(彼によると、いままでどの彼女もマンマのお気に召したためしはないのだそうです。息子を取られるのは誰であっても絶対イヤ!ってことでしょうか)唯一、一緒にお料理する時間はホノボノとして楽しい時間でした。(岡田直子)