サイト管理人の桝山寛です。イタリア料理といえば、何といっても、パスタとピッツァ(ピザ)ですよね。 日本でも、パスタは、日本人の麺類好きもあいまってか、高級リストランテでの凝った一皿から、ファミレスやカフェの定番、バーの裏メニューにいたるまで、もはやカレーやラーメンとともに、国民食といってもいいほどの人気です。
では、ピッツァはどうでしょう?ファミレスやカフェでは、よく見かけます。チェーン店や専門店も見かけますが、やはりイメージ的に一番大きいのは、宅配サービスではないでしょうか。日本で、宅配ピッツァがメジャーになったのは1980年代中期です。それまで、飲食店から自宅に配達してもらうことは、”店屋物(てんやもの)の出前”と呼ばれ、注文できるものも、中華、蕎麦、鮨、定食の弁当などに限られていました。
個人的なイメージでいえば、日本で外食のピッツァが食べられている度合いが多い順は…
1:宅配
2:ファミレスなどのメニュー
3:イタリア料理屋
4:専門店(宅配を除く)
…という感じでしょうか。
では、ナポリ風とかローマ風という区分はともかく、イタリア現地の”ピッツェリア(ピッツァ屋)”で出てくるピッツァと、私たちが日本で食べているピッツァは、違うのでしょうか?それとも、似ているのでしょうか?
私の答えは、”日本で食べられているピッツァの8割くらいは、イタリアのものとは違う”です。上記の分類でいえば、宅配店、ファミレスなどでは、ごく一部のお店を除いて、かなり日本風にアレンジされており、イタリア人が見たら”んー、これはイタリアン・ピッツァじゃないな”と言うはずです。
”専門店”には、大きく2つあり”アメリカ風”と”イタリア風”です。典型的にいえば、シェイキーズ。 もともと、1950年代にアメリカのカリフォルニアで創業し、1970年代に日本に進出したチェーンですから、まさにアメリカ風のピッツァを提供しています(個人的には決してキライではないです)。
日本でのイタリア風ピッツァの典型は、色んな見方があるでしょうが、私は、サルヴァトーレだと思います。宅配でも店舗でも、かなりレベルの高いピッツァを提供してくれています。値段は、”日本風”に比べれば、やや高めかもしれませんが。
私も、イタリアに行った時は、たまにピッツァを食べます。ひとつのパターンは、急いでいるときの軽いランチとして。日本でいえば、立ち食い蕎麦・うどん屋感覚の小さい店で、多くの人がテイクアウトし、一部の人が店内で半立ち食いをしています。メニューの種類も、それほどありません。チーズとトマトソースが乗ったシンプルなものを、”スライス”で食べるというもの。
ミネラルウォーターやコーラなどと一緒に頼みます。立ち食い蕎麦・うどんと似ていて、お店によって、すごくおいしいところと、そうでも無いところの差が激しいです。昼どき、地元とおぼしき人や近くの工事現場の人が多く来ている店は、おいしい確率が高いと思われます。
もうひとつは、夜、いわゆるトラットリアなどで、前菜、メイン…と食べる感じでないときは、ピッツァだけ食べに行くパターン。ただし、イタリアのピッツァは、一人前が大きいので、完食すると、かなり満腹になります。
鮨が日本食の代表だからといって、どんな店でもおいしいとは限らないように、ピッツァも、イタリアで食べるからといって、必ずしも”これぞイタリア!”という感じで、おいしいわけではありません。正直なところ、東京で食べるサルヴァトーレのピッツァは、イタリアの一部の店より、全然おいしいと思いますし、チェーン店だけにブレが少ないです。
サルヴァトーレだけではなく、都内では、ここ数年、イタリアでも充分に通用する本格的なピッツァを出す店が、急激に増えました。おそらく、数十軒はあるのではないでしょうか。実際に行ったわけではありませんが、聞く所によると、関西や、福岡などでも、少しずつ増えているようで、イタリア風ピッツァ好きとしては、嬉しいかぎりです。
さて、ここでは、私の友人であるイタリア人、ジャイメ(ローマ在住)が薦めてくれて、一緒に行き、私も印象に残ったピッツェリアを紹介しましょう。それは、ローマのトラステヴェレ地区にある、”ビル&フッド”(bir & fud)。英語でいえば、”ビール&フード(Beer and Food)”ですから、日本的なイメージだと”ビアホール”という感じでしょうか。
”bir & fud" 入り口前、外のテラス席。撮影したのは4月。
ジャイメによれば、かなり人気なので事前の予約が必要とのこと。東京では、カジュアルな飲食店でも予約することは珍しくありませんが、ローマで、リストランテ(いわゆる高級店)ではなくピッツェリアで、事前予約があたりまえというのも、ちょっと珍しいと思いました。
名前のとおり、飲み物はビールがウリです。そしてフードはピッツァ。イタリアは、ワインのイメージが強いですが、この後で直子さんも書いているように、ピッツァには、なぜかビールですね。もちろん、ワイン飲んでも、全然オッケーですが。
こんな写真しか無くて、申し訳ないんですが、左に並ぶのが生ビールのサーバー。
奥に入ると、天井がテント的な感じになっています。夏は、これを外して広いテラス席になるのかもしれません。
前菜に、ピッツェリアの定番、アランチーニ。いわゆる”ライスコロッケ”です。bir & fudでは、三種でてきて、しかもソースがそれぞれ別、というところが、他のピッツェリアと違っています。カジュアルなメニューですが、手がかかっているという印象。ちなみに、アランチーニとは”小さいオレンジ”という意味だそうです。
そして、これ!白いものは、”エキストラ”でトッピングしてもらう生のモッツァレラです。これが激ウマ。
以前、本サイトのこの記事で登場してくれた、ジャーナリストのディエゴ。これで、1人前のピッツァの大きさが、おわかりいただけるかと。手前にあるグラスはワイン用に見えますが、中身はビールです。ラガーではなく、(独語でいう)ヴァイツェン?
私自身(桝山)は、エキストラチーズをオーダー。ピッツァに”生のモッツァレラ”を乗せるものは初めてでしたが、感動的に美味しかったです。まぁ、日本から行くと、イタリアで食べるモッツァレラは、それだけでも激ウマ、と感じることが多いですが…。
その意味で、ウマいピッツァに、生モッツァレラは、もう反則(笑)。今まで食べたピッツァの中で、もっとも印象に残っている一皿でした。あぁ、また行きたい(笑)。
(桝山寛)
bir & fud: Via benedetta, 23 Roma Zona Trastevere
19:30〜24:00 (週末は26時まで)